採用できても辞められる会社は、「採用と定着」を別の話だと思っている
2026年の最新データをもとに、中小企業が今すぐ取り組むべき採用・人材定着の具体的な施策を実務レベルで解説します。
「採用と定着」はセットで考えないと、永遠にコストが膨らむ
採用できても定着しない。このサイクルを繰り返している会社に共通しているのは、採用活動と定着の仕組みを別の問題として考えていることです。
中小企業の正社員採用は、大企業との賃金格差による応募数の少なさや既存社員との処遇調整など、多くの課題が残されています。 その上、 新卒社員の約3割が入社後3年以内に離職すると言われており、中小企業においてはその割合がさらに高い傾向にあります。従業員30名未満の事業所では新卒3年以内離職率が半数近くに達するというデータもあります。
採用にコストをかけても、入社後の定着の仕組みがなければ、そのコストが繰り返し発生し続けます。2026年版中小企業白書でも、 求める人材像を明確化できている事業者ほど、採用の成功割合も入社後の定着割合も高いことが示されており、採用と定着をセットで考える必要性が浮き彫りになっています。
転職者が7割:中小企業の採用チャネルは今すぐ見直せる
中小企業への採用は、新卒より転職市場を狙う方が現実的です。
中小企業(常用労働者数5〜299人)への入職者のうち、約7割が転職入職者であることが示されています。入職経路については年代によって差があり、20歳代・30歳代の転職入職者では求人広告(インターネット求人を含む)とハローワークがほぼ同程度となっています。一方、40歳代以上ではハローワークの利用割合がより高くなっています。
つまり、若手を採りたいなら求人サイト・Indeedなどのインターネット求人を強化し、経験豊富な中高年層を採りたいならハローワークを使い分けるのが効率的です。「とりあえず全部に載せる」より、ターゲット層に合わせてチャネルを絞った方が費用対効果は上がります。
求人票の内容も見直しが必要です。 「アットホームな職場」「やりがいのある仕事」といった抽象表現は何も伝えません。「残業月平均5時間」「20代〜50代が活躍」「未経験入社が7割」など、具体的な数字や事実で書くことが信頼につながります。
「人材像の明確化」をしていない会社は、採用も定着も低い
何となく「元気な人」「コミュニケーションが取れる人」で採用しようとしていませんか。それが採用ミスマッチと早期離職の温床になっています。
年齢・経験・性格・職種・スキル・価値観などを具体的に検討し、人材像を「明確化できている」と回答した事業者は、「明確化できていない」事業者と比べて採用に成功している割合が高いことが示されています。また、明確化できている事業者では、採用した従業員の定着割合も高くなっています。
人材像の明確化は、採用の入口から入社後の育成まで一貫して効いてきます。「自社にとって必要な人材像」を言葉にする作業は、求人票の改善だけでなく、面接での見極め精度を上げることにも直結します。
最低限、以下を言葉にしておくことから始めてください。
- どの職種・業務を担当してほしいか(業務内容の具体化)
- どんなスキルや経験が必要か(必須条件と歓迎条件を分ける)
- どんな価値観・働き方の人に合う職場か(自社の実態に即した表現)
賃上げゼロは今や採用市場での自滅に等しい
賃上げは「大手企業がやること」ではなくなりました。
東京商工リサーチの2026年度調査で企業全体の賃上げ実施予定率が83.6%に達しました。中小企業に限ると82.8%です。 賃上げに対応できない企業は人材の流出リスクが高まります。賃上げしない企業は採用市場で不利になります。
ただし、賃上げ率の水準格差も現実です。 2025年の春季労使交渉では全規模で賃上げ率が5.25%に達しました。中小企業(組合員数300人未満)では4.65%となっています。 大手との差は埋まりきらないのが実態です。
だからこそ、賃金以外の「選ばれる理由」を整備することが中小企業の生命線になります。 2026年、生き残るのは「人を集める」企業ではなく、「少ない人で回す」仕組みを作った企業か、従業員に「選ばれる」魅力を持った企業です。
定着率を上げる「入社後3ヶ月の仕組み」
採用後の定着は、最初の3ヶ月でほぼ決まります。この時期に放置すると、不満が蓄積して突然辞める事態につながります。
定着率が低い企業の特徴として、求人票と実態のギャップ(「残業少なめ」と記載しているのに実際は月40時間超で若手が退職)、入社後フォローがなく放置される教育・オンボーディング不足、昇給基準や評価基準が曖昧で将来像が見えない人事評価制度の不透明さ、が共通して挙げられます。
逆に言えば、この3点を潰すだけで定着率は大きく変わります。実践すべき最低限の仕組みは以下の3つです。
①最初の1ヶ月の仕事をリスト化する 初日から1週間の動きを書き出しておくだけで、新入社員の不安は大幅に減ります。「何をすればいいかわからない」状態をなくすことが最初のゴールです。
②3ヶ月・6ヶ月の面談を予定に入れる
3か月・6か月・1年面談を実施することで、「定着する最初の1年」を乗り越えやすくなります。 問題が小さいうちに把握することが目的です。
③人事評価の基準を見える化する
人事評価制度を設けている事業者は、定着割合が高いことが見て取れます。公正な評価の仕組みを設けることは、従業員が「頑張りが報われる」と感じられる職場環境を作ることにつながります。 昇給基準を文書化して全員に見せるだけでも、将来への見通しを持ちやすくなります。
採用と定着は、別々の施策ではなく一本の流れです。「どんな人材を採るか」の明確化から始め、入社後の最初の3ヶ月を仕組みで支えることが、採用コストを無駄にしない一番の近道です。採用・定着の課題を整理したい方は、業務改善テーマ整理シートで現状のボトルネックを洗い出してみてください。
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